『平和橋自動車教習所』 教習指導員
木村義巨/工高36期C組(機械科) 「昭和58年度卒業」
時の経つのは早いもので母校を卒業して三十年余りの時間が過ぎ去りました。 私、これまでに色々な仕事を経験して来ましたが、現在は、昭和の香りが残る東京の下町、葛飾区に有る『平和橋自動車教習所』で教習指導員として皆さんの免許取得のお手伝いをさせて頂いております。 当所は、都内で唯一全車種の運転免許が取得できる教習所で自動車以外にも、移動式クレーン運転士免許、クレーン・デリック運転士免許、フォークリフト、小型移動式クレーン、玉掛け等の技能講習も行っています。
少し教習所の仕事についてお話ししますと、先ずは皆さんの各種免許取得のお手伝いに加え、初心者講習、高齢者講習、取得時講習、取消処分者講習等を行っていますが、初心者講習と取消処分者講習は違反等で行政処分を受けた人が受けるもので、出来れば受講したくない講習です。
これだけ幅広く教習や講習を担当するにはそれだけ指導員資格を取らなければならず、これがまた一苦労です。指導員資格は車種ごとの取得が必要で、その他、適性検査や応急救護等を行うには、また別の資格が必要になります。そして最難関が技能検定員の資格です。車を運転するという行為を総合的に見て一定水準にあるかどうかを見極め、更に絶対の公正が求められる事から、そのプレッシャーは指導員の比ではありません。更に、皆さんに安全運転について語る以上、プライベートでの運転についても会社から厳しく管理されています。
周囲からは「助手席に乗って居るだけで、楽で良いな」なんて言われる事も有りますが、意外に大変な事です。
三十八歳でこの業界に入り、四十二歳で指導員デビューをした訳ですが、私の子供ぐらいの同期や先輩達に囲まれ頑張って来ました。 私の若かりし頃を知る悪友たちは「お前に教えられる教習生が可哀想だ」等と、茶化して言いますが、この昔の行動や運転での失敗が、今、大いに役立っています。 本に書いて有る、在りきたりの事柄だけではなく、リアリティーの有る話として過去の経験がこんな形で役に立つとは思いもしませんでした。そしてこの仕事を始めて感じた事は、どんなに些細な事でも知識・経験として持っていて損する事はないと言う事です。
教習所には様々な年齢、性格、職業の人達がおみえになり、そこで教習生との距離を詰めるための『引き出し』が必要になります。 この引き出しは、多ければ多い程重宝しますし、同じ事を説明するにも要領の良い人、悪い人、器用な人、不器用な人、マイペースな人、神経質な人、大雑把な人、果ては運転が嫌いな人まで、その人に合った指導・説明を行うためにもこの引き出しの多様さが物を言う訳です。なので、これからも色々な事柄に興味を持ち雑学の『引き出し』を増やして行ければと考えております。 今後、東工学園同窓会の皆さんの免許取得のお手伝いをさせていただける事を、卒業生の一人として楽しみにしております。